Don't fry leg

「揚げ足取り」って言葉がありますよね。

物事の些末な点、言葉尻や勘違いをとらえて非難する、というような意味で使われています。おおよそ殆どの場合非生産的とされ、否定的なニュアンスで使われているのではないかと思います。

 

ところでこの言葉、相撲で相手がうかつに上げた(揚げた)足を取って倒す事が語源になっているらしいです。相手の隙を見逃さずに咎めることから失言を非難することに転じたようですが……これってすごく違和感がありませんか?

 

勝ち負けを競う相撲で相手が隙を見せたなら咎めるのが当然というか、足を揚げたから取るのは相撲のルールにもなんら反していませんし、アンフェアというわけでもありません。じゃっかん狡猾な印象を受けないこともないですが(実際そうだからこんな言葉が出来たのでしょう)、あくまで相撲のルール内の正当な勝ち方、その手法といえます。

であるならば、転じた慣用句としての「揚げ足取り」も、「相手の発言や発表の矛盾、瑕疵を指摘して非難する」という意味にはなりこそすれ、そこに「些末な点」だとか、「言葉尻」というニュアンスは入るはずがないでしょう。どう考えても足を揚げることは些末なことではないですし、それを取ることは非生産的でもないですよね。勝てるんだから。

そしてこのより"原義的"な意味での「揚げ足取り」は、決して悪いことではない、むしろ生産的にもなり得る行為と言えるのではないでしょうか。

 

「言葉の意味なんて約束事でしかないんだから、語源と多少ズレるのは当たり前だ」という反論、いえ、「揚げ足取り」は安易に思い付きますが、どうしてそんなズレが発生したのでしょうか。

 

それはそうと、実際われわれがこの言葉を目にするとき(多くは「揚げ足を取るな!」というかたちで)それらが本当には「些末な間違い」を指していないこともしばしばありますね。

もしくは、「些末な間違い」や「言葉尻の曖昧さ」すら許されない厳密な議論や発表においてもこの言葉が使われることがあるかも知れません。揚げ足を取られる余地を残してはいけない場には、もはや揚げ足取りという概念は存在しないのにもかかわらず、です。そしてやはりというか、それも単なる揚げ足取りではないことは多そうです。

つまり、自分の問題点に対する指摘を、些末でどうでもいいものだとレッテル貼りするために使われることがある、ということです。

 

このような用法を目的として、「揚げ足」の語義の語源とのやや不可解なズレーー「些末な」というニュアンスの追加が発生したというのは飛躍しすぎた想像でしょうか。

 

論理の矛盾はしばしば見過ごしてしまうもの(少なくとも私のような凡人は)ですが、それを他人に批判され、素直に認めるのも簡単ではないでしょう。それならば、相手の批判がそもそもナンセンスだということにしよう、何か良さそうな言葉は無いだろうか…… 

ひょっとしたらそんな思いから語義が付け加えられたのかもしれませんね。

 

どうでもいいですが、僕はこの言葉の意味を語源から知ったので2,3年前までは「些末な」というニュアンスがあるとは知らず、「揚げ足取ったら何があかんのやアホなんか?」と思っていました。「正しい」用法に対しては「いやそれは揚げ足じゃなくてどうでもいい間違いやん……」と思っていました。

「揚げ足とか取られる方が100パーセント悪いやろ」などとわめいた時に周囲から一切の賛同が得られなかった時に齟齬があったことに気付くべきでした。

しかしこういう誤認に気付く瞬間はなかなか得難い感覚というかアハ体験というかそういった類のものがあるので良いですね。周囲とのディスコミュニケーションを感じたら辞書を手にとってみるのはいかがでしょうか。

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